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ネガを見返すと、最初の数コマは桜だった。枝垂れ桜が、よく晴れた空にほどけている。この日はたしか、友人と桜を見に出かけた日だ。それで終わるはずの日だった、と思う。
正直に言うと、あまり覚えていない。覚えているのは、若くて、時間だけが余っていたことくらいだ。

ネガを数コマ進めると、桜は消えて、田んぼと鉄塔の列になる。誰が海と言い出したのかは、もう思い出せない。
気づけば、行き先が海になっていた。

海に着いて、何をしたわけでもない。ぼーっとして、少し歩いて、またぼーっとして。
それだけの時間を、フィルムは律儀に何コマも使って残している。
当時の自分は、ただただシャッターを切っていた。

目的地だったはずの桜より、予定になかった海の方が記憶に残っている。覚えている、というのは正確ではないかもしれない。
行き先の順番を覚えていたのはネガで、桜から海までの道のりは、現像されたフィルムの中にだけ残っていた。
道草の先に、いつも海がある。
ブログに名前を付けたとき、頭にふと湧いたのは、こんな日のこと。
この日のフィルム
この日撮っていたのは、業務用100という、なんでもないフィルムだった。
いまは店先で見かけることも少なくなったけれど、見たままの色を、あわてず残してくれる。
あの日の水平線も、たぶんこの色で覚えている。

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